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~61.1kmの日常~

駅舎の維持管理をする人

エール北上線

駅舎の維持管理をする人

村さ来亭 高橋信夫さん・福子さん

JR北上線は全15駅で構成されているローカル線です。駅舎を何気なく利用できている背景には、清掃や施設管理などを通じて支える人たちの存在があります。

相野々駅はカラオケルームや喫茶レストラン「村さ来亭」を併設し、シンガーソングライター高橋優さんの聖地としても知られる駅舎です。

今回は駅舎を管理する高橋信夫さん、福子さんにお話を伺いました。

お二人にとってJR北上線は昔から身近な存在だったとお伺いしています

信夫さん)70年間、北上線とともに過ごしてきた人生でした。生まれた場所も北上線・小松川駅の近く。就職で東京にいた時期もありますが、そのときも北上線を利用して上京したことを覚えています。今も仕事中は、北上線の車輪の音を時計代わりにしていますよ。

福子さん)夫とは中学の同期生です。高校生から北上線を利用するようになり、いろんな人を電車の中で見るようになりました。

おばあちゃんが籠を背負って、商品を仕入れに行く姿も多く見かけましたね。行商する人がいっぱいいる電車なんだなと、高校時代は北上線についてそんな印象を抱いていました。

信夫さん)当時は地元集落の人たちが皆この駅を利用していました。喫茶レストラン「村さ来亭」があるスペースも昔は駅舎として賑わっていたんですよ。

JR北上線とともに、相野々駅の移り変わりも見てこられたんですね

信夫さん)まだ山内村(現在は横手市と合併)だった頃は、相野々駅にも駅員さんがいて、駐車場には官舎がありました。当直の方もいて、駅に常駐する職員がたくさんいたんです。

現在の駅舎は平成8年に建て替えられたもので、併設された交流センターは「ポッポあいのの」の愛称で親しまれています。「ポッポ」というのは、「汽車ポッポ」と「鳩ポッポ」を語呂合わせしたもの。鳩は山内村当時の村鳥なんです。

相野々駅の指定管理を受けるまでには、どのような経緯があったんでしょう?

福子さん)私たちは当初、相野々駅のテナントとして「村さ来亭」を営んでいました。

前任の指定管理者は商工会でしたが、職員体制の兼ね合いもあって指定管理から手を引くという話が次第に聞こえ始めていた。

寂しいですが北上線は現在無人駅が多い路線です。人口減少という課題だけを見ていたら、相野々駅も無人駅になるのが自然な流れだったのかもしれない。

信夫さん)相野々駅を無人駅にしたくないという願いは、山内村当時から皆が抱いていたと思います。でなければJRが撤退するとき、管理を引き継ぐ話も出てこなかったはず。この思いがなければ、今頃私たちも別の場所で商売をしていたと思います。

そのような経緯もあり、横手市が相野々駅の指定管理者を再度公募。私たちが選ばれ、平成29年から相野々駅の指定管理者になり現在に至ります。

駅舎の指定管理というと、具体的にどのようなお仕事をされているんですか?

福子さん)切符販売をはじめ、老朽箇所の修繕や屋根の雪下ろし、清掃業務のほか、セキュリティ管理や経理など業務内容は多岐に渡ります。

一貫して言えるのは、駅舎を安心安全、そして快適に利用してもらうためのお仕事ということですね。相野々駅はカラオケルームや多目的ルームもある駅舎なので、交流センターとしての窓口業務も大切なお仕事です。

信夫さん)北上線を利用される方の中には、相野々駅で降りてから目的地までの経路に迷う方もいます。そんなときは駅舎の外にある『横手市山内地域マップ』を見ながら、観光案内をさせていただくこともありますよ。

駅舎管理だけでもお忙しいと思いますが、村さ来亭さんはお弁当の仕出しもされているとか

信夫さん)ご注文を受けた地域の方へ、お弁当の仕出しも行っています。駅舎のセキュリティを解除してから、村さ来亭で仕込みに入るのが毎朝のルーティンなんです。

福子さん)村さ来亭は二人だけで営業しているので、受けられる注文には限りがあります。それでも毎日お弁当を注文してくれる地域の皆さんには感謝してもしきれないですね。

信夫さん)予約をいただければ確実ですが、ランチタイムに立ち寄っていただければ、お昼ごはんもご用意できますよ。

これまでJR北上線、相野々駅と関わってきた中で思い出に残るエピソードはありますか?

信夫さん)一人ひとりとの出会いが大切な思い出です。

カラオケルームの常連には、80代の方々もいます。階段の上り下りもちょっと苦しそうなのですが、利用後に「歌ってスッキリした」「元気になったよ!」という声が聞けるので、駅舎管理をやっててよかったなと思います。

交流センターは休憩場としても使われるので、椅子に座ってホッと一息ついている姿を見ると、私たちも安心しますね。

福子さん)たまに話に夢中で電車に乗り遅れそうな方もいて、慌てて声をかけるのですが、そんな日常がとても愛おしいです。

シンガーソングライターの高橋優にゆかりのある駅舎なので、全国からファンが訪れてくれるのもありがたいです。電車利用はもちろんですが、色々な方が出会い、新たなコミュニティが生まれる場所だなと感じます。

※高橋信夫さん、福子さんはシンガーソングライター高橋優さんの叔父・叔母にあたる方です。そのため、本文中では高橋優さんの敬称を省略しています。

JR北上線や相野々駅に関して、今後の思いを聞かせてください

信夫さん)観光分野と協力して、人の交流をもっと増やしたいですね。

地元には音楽愛好家がたくさんいるので『エキナカコンサート』を相野々駅で開催したこともあります。普段の駅舎とまた一味違った雰囲気になり、大いに賑わったイベントでした。

コロナの影響もあり現在はお休み中ですが、このような地域を盛り上げるイベントも徐々に再開していきたいです。

福子さん)交流センターには展示スペースがたくさんあるので、駅舎を見学した子供たちの感想文や手紙を掲示してます。親御さんも見に来てくれるので、新たな交流のきっかけになればなと。

北上線は利用者が減少している路線ですが、今も必要としている方々がいます。とくに高齢者や免許のない方にとっては、生活から切り離すことのできない交通手段です。

できることから少しずつでも、相野々駅を通じて魅力を発信していきたいですね。