
エール北上線
北上線の運行を支える人
東日本旅客鉄道株式会社 盛岡支社 一ノ関統括センター
運転士 中山 天さん
中山天さんはJR北上線の運転士。北上〜横手間の全長61.1km、乗客それぞれの日常を安全運行でつなぐ欠かせない存在です。
JR北上線は四季でまったく別の顔を覗かせるローカル線。何気なく乗車している電車には、運転士さんの細やかな配慮、そして正確な技術が詰まっています。
今回は中山さんが運転士として、日々大切にしていることをお伺いしました。

最初にJR北上線の運転士になるまでの経歴を教えてください
2018年度にJR東日本に入社し、東京都池袋駅で改札業務を2年半担当しました。その後、運転士になるため盛岡運輸区へ転勤となり、電車免許を取得。2022年の冬から一関運輸区に異動して現在に至ります。
運転士としては東北本線と田沢湖線、大船渡線を担当したのち、北上線に配属されました。現在、泊まり勤務のときは北上線を2往復、日勤のときは1往復の運行を担当しています。
※東北本線(盛岡〜一ノ関)、田沢湖線(盛岡〜田沢湖)、大船渡線(一ノ関〜気仙沼)、北上線(北上〜横手)


JR北上線の運転士に配属されたとき、率直にどのような思いを抱きましたか?
北上から横手間まで運行時間や距離はどれくらいなんだろう、というのが最初に浮かんだ思いです。
田沢湖線も秋田までの路線ですが、そのときはまだ岩手県境を運行しているイメージでした。北上線は横手駅までの運行になるので、秋田の内陸まで入ります。
実際に運転してみると直線区間が多い路線なので、山を越えればあっという間に横手に到着するんだなという印象でした。
運転士として普段の生活で気をつけていることはありますか?
運転士は体力勝負の仕事でもあります。そのため、睡眠時間は十分確保するように心がけていますね。普段の生活でも体を休められる時間があれば、積極的に休息を取るようにしています。
また、出勤前日はお酒を控えます。運行前のアルコールチェックで検知されていては、運転士として業務ができませんので。
どのような状況下でも運転に集中し、お客様を安全にお送りするためにできることは、常日頃から意識して実践しています。


JR北上線の運行時に注意していること、心がけていることはありますか?
北上線は動物がよく出るので、衝突事故の無いように十分注意しています。出没する場所はだいたい決まっているため、そういった区間では汽笛を鳴らして安全運行につなげています。
あとは乗り心地ですね。安全運行のルールを順守したうえで、お客様が快適にご乗車できる運転を意識しています。駅に停車するときのブレーキ、発車時の加速はとくに慎重になるポイントです。
また、北上線は気動車(ディーゼル車)なので、エンジンを稼働すれば振動が発生します。そのため、不必要な加速をしない運転も日々心がけています。
JR北上線の運転士として、やりがいを感じること、大変に感じることはありますか?
北上線は豪雪地帯を走る路線なので、冬季はとても緊張感が高まります。
私が岩手県沿岸の出身ということもあり、北上線の雪は多く感じますし、冬はとくに安全面に配慮して運行する季節です。
その中でお客様を安全に、そして定刻通りにお送りできたときは、運転士としてやりがいを感じます。



JR北上線は奥羽山脈を横断する路線ということもあり、運転席からはさまざまな景色が見えると思います。とくに印象深いものはありますか?
錦秋湖の上を走行しているときは、北上線ならではの景色が流れていくなと感じます。湖の上を走行する路線は盛岡支社の中でも珍しいので、運転士としてもおすすめしたい景色です。
お客様にはぜひ「錦秋湖大滝(西和賀町)」周辺の景色を見ていただきたいですね。ここはちょうど速度を45km/hに落とす区間にもなっていて、北上線ならではの景色をゆったりと堪能いただけると思います。
線路と並ぶ廻戸(まっと)橋、旧国鉄横国線時代の線路の跡も見ることができるので、北上線にご乗車する機会があれば、ぜひ堪能していただきたいです。
他にも紅葉の季節はおすすめで、木々が色づくと錦秋湖はより広く見えます。
運行中は前方に集中しているので景色を眺めることはありませんが、運転士見習いのときに車窓から見えた紅葉がとても鮮やかで、そのときの光景を今でも鮮明に覚えています。
時間帯によって景色が変わるのも醍醐味で、朝日が反射して輝く湖面はとても綺麗ですよ。
JR北上線利用者とのコミュニケーションで印象的なものはありますか?
岩沢駅(北上市)からご乗車するお客様と、よくご挨拶させていただく機会があるんです。短い時間ですが会話をすることもあります。
他にも「暑い中お疲れ様」「いつもありがとうね」とお声がけくださるお客様もいて、とても励みになります。
運転士として顔を覚えていただけたときは、とても嬉しく印象に残る瞬間ですね。


これからJR北上線の運転士として大切にしたいことはありますか?
第一は安全・安定輸送ですね。
北上線は錦秋湖をはじめとした綺麗な景色が楽しめる路線です。
このロケーションは北上線でしか見ることができないので、速度を落とせる区間では、お客様に景色を楽しんでもらえるような運行も大切にしていきたいです。
運転士として他の路線も担当しましたが、北上線はとくにお客様との距離が近い印象があります。
今後も挨拶をはじめとしたお客様とのコミュニケーションを大切にしながら、安全・快適に目的地までお送りする運転士としての技術に磨きをかけていきたいです。
